咲き誇れ
 ! ほんのちょっぴりグロいです

 ある日、いつものようにリィダが美女を襲おうとしたところ、うっかり間違ってジョロウグモを襲ってしまいました。
ジョロウグモはリィダが彼女の首に噛みつくよりも早く、細い6本の腕でリィダを捕らえると、上品な金色の目と口をカッと開いてリィダを睨みます。
何が起こったのか分からず呆然としていたリィダは、思わず「鬼婆だ。」と言ってしまいました。
激怒したジョロウグモはリィダをガブッガブッと2噛し、さらに口にくわえてブンブン振り回したあげく、林檎の木に彼を叩きつけました。
さすがのリィダも身の危険を感じて逃げ出します。普段はトロい彼も、逃げ足だけは速いのです。
リィダは「身の程知らずめが!次に会ったときは覚えておけよ!!」というジョロウグモの憎々しげな声を後ろに、どうにか難を逃れました。

 島に帰るとジグザグがいて、ムシクイを蹴っ飛ばして遊んでいました。あっ、ちなみにムシクイは擬人化じゃありません。デフォですよ、デフォ。
「ゴールデンジグザグスーパーミナクルエターナルファイナルとりあえずなんかむっちゃすごいかっこいいシュート!」
適当な掛け声と共に、ムシクイは空の向こうへ飛んでいってしまいました。また買い直さなければなりません。
ジグザグは頭の絆創膏から血をダラダラ垂らしているリィダを見て、目を輝かせました。
「どうしたの。すっかり僕好みになっちゃって。ヴヒヒ。」
リィダは「鬼婆。」とだけ言って、その場にしゃがみこみました。絆創膏から落ちた血が、地面にピンクの模様を描きます。
その様子を見てジグザグはさらにハイテンションになりました。
「ねぇ、コートの下も怪我してるでしょ。見せて見せて見せて見せて見せて見せて」
リィダが苦しそうにしているにも関わらず、大声を上げてまとわりつきました。だいぶ非常識です。
嫌な気分になったリィダは、目を瞑ってうつ伏せになりました。 (こんな感じです)
「見せて見せて見せて。ああ、もう面倒くさい。勝手に見るよ。」
ジグザグはコートの裾を掴んで、思いきり捲り上げると、感嘆の声を上げました。 リィダの白い背中には、赤と青の痣の花が咲き誇っていたのです。
ジグザグは目を爛々とさせ、いつもの3倍の速さでしゃべりだしました。
「痣は怪我の中でも特に好きだよ。だって、とても芸術的だから。
ねぇ、この首から背中にかけての部分、赤と青の比率がバッチリだよ。ヴヒッ、もう最高!それでね…」
ジグザグはそれからリィダの怪我の美しさをひたすら褒め、怪我について語りまくりました。
ジグザグの話があまりに長いので、リィダは途中で寝てしまったのですが、そんなのお構いなしです。
マニアってやつは、とりあえず自分がしゃべれれば、それで満足なのです。
「…そうそう、包帯って言えば、ピグミークローンの包帯の下がどうなっているかというと…」
ジグザグがそう言ったとき、頭の中で小さく彼を呼ぶ声がしました。
飼い主の唐沢教授です。ジグザグが家出をしたのに気づき、呼び戻そうとしているのです。
ジグザグは不満そうにヴヒッと鼻を鳴らしました。
「やれやれ、もうちょっと眺めていたかったのに。」
リィダの背中を名残惜しそうに撫で回して、立ち上がります。
「うるさいなあ。」
くるりと後ろを向きます。
「そんなに何度も呼ばなくたって、ちゃんと聞こえてるさ。」
島からとび立つために、体をぐっと引き締めました。
「う…鬼婆…。鬼…婆…。」
ジグザグはもう一度くるりと振り返りました。リィダが眉間に皺を寄せて、苦しそうにうめいています。
ジグザグはすっとリィダを指さしました。
「/cure/cure/cure」
リィダの絆創膏から垂れた血が消え、絆創膏に付いた染みが消え、最期に絆創膏もひゅ〜んと浮かんで消えてしまいました。
ジグザグはちょっと不機嫌そうな顔をすると、後はもう振り返らずに帰っていきました。

 すっかり具合の良くなったリィダは、静かな寝息を立てています。
その背中には小さな赤と青の花が残っていました。




痣に対して嫌な思い出のある方はごめんなさい。
唐沢教授「むぅ、このファミコン壊れおった。りぶり〜が戻ってこん!」カチカチカチカチ(20回/秒)


update:061228